【改革の歩み—第27話】
業界改革の方向性の再確認


 

  皆さん、こんにちは。公益社団法人東京都柔道整復師会会長の工藤鉄男です。

  さて、今の日本は、経済的にも政治的にも、かなり不安定な状況にあります。
  そして、国民の健康と仕事、老後の安心といった、生活の中心となる社会保障制度についても、国会で数年を掛けて議論を進めていますが、誰がどれだけの負担をすべきか。それを年齢別、所得別に、どう分担すべきなのかという所で、中々うまい方法が見つかっていません。
  それは、支える側と支えられる側の比率が、大きく、しかも急激に変わった少子高齢化が根底にあり、また今後20年、30年先には、その状況がさらに大きく様変わりする事が、予想されているからに他なりません。
  だからこそ、今後の国家の未来像が明確に示され、その先にどんな景色が見えてくるのがはっきりすれば、国民の安心と信頼が育ち、それによって新しい時代や制度を支える大きな力に、変えることができるはずです。
  しかし、アベノミクスと名付けられた経済政策が行き詰まり、国が巨額の赤字を抱えた現状のままでは、どうしても、総量規制的な発想ばかりが優先した改革になってしまいます。
  そうした流れからの脱却が最も望まれている所なのですが、先日、医科においては、財政優先で「後発薬の推進」や、「重複受診の抑制」といった改革項目があげられ、「頻回受診の抑制」という方向性さえもが示されました。
  それは、日本における投薬と検査にかかる費用が、同じ西洋医学を行う先進諸国平均の、約4~5倍とも言われていることが、背景にあるようです。
  投薬や検査によって、患者の体を全身で包括的に管理治療する西洋医学においては、検査や処置を頻回に行う必要性は少ないと考えられているからです。
  しかし、日本の医療現場では、同一病院内であっても、診療科目は臓器ごと、病名ごとに細分化され、それを横断するたびに、検査や投薬が、何度も重複することが、無駄の対象となっているのです。
  ところが、日本の伝統医学である我々柔整施術においては、日々の手当てで、治癒に導くことを主としています。特に受傷直後等は、間をあけずに毎日施術する事こそが、早期に治癒に導く、最も効果的で重要な作業であり、それが急性外傷を得意とする柔整施術の基本軸となっています。
  つまり、包括的な管理を軸にしている医科だから、「頻回受診」は問題視されますが、逆に柔道整復では日々繰り返す施術こそが肯定すべき重要なポイントとなります。
  それを「総額削減」という国家の経済的な理由を優先し、国民の為に創られた制度の根底にある本来の理論をも覆して、医科同様に単純に抑制したのでは、国が認めている柔道整復の資格と制度自体を、国自身が否定しているとさえ思えてなりません。
  柔整施術という日本古来の伝統医療の真意を正しく理解し、正しく行われさえすれば、現在保険者が行う2次調査ですら、むしろ柔整施術の正当性を証明するという側面さえ持っていることになるのです。
  データとの向き合い方の根底にある真実から目を逸らしてしまったのでは、何事であれ、事の真理は絶対に見えてきません。
  さらに、負傷した部位ごとに、個々に別々に手当てするという、柔整固有の施術方法についてさえも、現在は請求面から「多部位は問題である」として、保険者の2次調査の対象となっています。
  柔整施術の請求部位数については、制度が開始された当初から、怪我をした部位ごとに、整復等の手技を施し、電療や包帯固定などの手当てを行うことに基づいて請求が行われる、いわゆる「部位別請求」という柔整固有の仕組みになっています。
  それ故に、対応すべき部位が多部位となることを予め想定して、1部位あたりの単価が低く設定されてきたという、歴史的な背景があるのです。
  しかし、財政ばかりを優先し、包括的に管理する医科の改定と連動した度重なる改定によって、部位別請求を主とする筈の柔整療養費は、現在では3部位までしか請求できない事態になってしまいました。
  これにより、患者利益の精神で、4か所以上の手当てをしたとしても、実際には請求できないという状況にあるのです。
  また、平成21年の事業仕分けの際には「多部位の地域格差」が問題として挙げられましたが、そこで問題になったのは「地域差」であって「請求部位数」ではありませんでした。
  それが、いつの間にか問題点が、すり替えられてしまったのです。
  もしも、指摘通りの地域格差を問題にするのなら、憲法違反と最高裁で判決が出ている「国政選挙の一票の格差」を始め、他の業界にも多くの地域格差があることは、周知のことです。
  現在、国が公に算定基準で認めている、柔整の「3部位目の施術」を、公開の場で問題にすること自体が異常だったと言わざるを得ません。
  つまり、「瀕回」についても、「多部位」についても、柔道整復術を正しく行う限りに於いては、何ら問題はありません。
  柔道整復師としての誇りとモラルを持って、正々堂々と施術を行い、それを正しく請求に反映させ、柔整施術の正当性をしっかりと証明して頂きたいと思います。
  一方で、都柔整会員からは、患者さんの通院抑制になるような行き過ぎた調査があるという、困惑の訴えがあることも理解しています。
  今後は、包括治療、包括請求の医科とは全く違う仕組みである、柔整施術固有の『頻回施術』の必要性や、『部位別施術』によって認められた「多部位」という概念について、引き続き開催される柔整療養費検討専門委員会の場に於いても積極的に関係機関との相互理解を深めて、ご理解いただくための努力を重ねてまいります。
  そして、何よりも、柔整師という職業、そして、その制度も、すべては国民・地域住民のためにあるという視点に立ち戻り、「施術を受ける自由」を持つ患者さんの利益を損ねることに繋がる「通院抑制」が生じない様に、そして同時に、不届きな資格者による不正施術・不正請求を絶対に許さない仕組みを、1日も早く構築して、柔道整復師が国民のために活かせるような未来を、作り上げたいと考えております。